英単語の勉強で「単語帳を 3 周したのに覚えていない」という経験は珍しくありません。原因は周回数ではなく、復習の間隔と方法にあります。
英単語は、忘却曲線の影響を最も受けやすい学習対象の一つです。1 語 1 語が独立していて、文脈の助けが少なく、覚えた直後から急速に忘れます。だからこそ、復習のタイミングを設計するだけで結果が大きく変わります。
1 語の復習間隔:翌日・3 日後・1 週間後・2 週間後・1ヶ月後
覚えた直後の記憶は、最初の 1 日で最も大きく失われます(忘却曲線)。そのため、1 回目の復習は翌日に置くのが基本です。その後は、復習のたびに記憶が持ちこたえられる期間が延びるので、間隔を広げていきます。
- 1 回目: 翌日
- 2 回目: 3 日後
- 3 回目: 1 週間後
- 4 回目: 2 週間後
- 5 回目: 1ヶ月後
この広げ方の根拠は間隔反復の記事で解説しています。数字の厳密さは要りません。研究が示しているのは「忘れかけた頃に、間隔を広げながら思い出す」という原則の頑健さで、1 日ズレても効果は変わりません。
単語帳は「周回する」のではなく、「復習日に戻る」。
「3 周する」という目標は、1 周目と 2 周目の間隔を決めていません。1 周目に 2ヶ月かけると、序盤の単語は 2 周目が来る頃にほぼ消えています。周回数ではなく、1 語ごと(または 1 ページごと)の復習日で管理するのが、忘却曲線に合った回し方です。
単位は「1 語」ではなく「見開き・セクション」でよい
1 語ずつ復習日を管理するのは、単語カードアプリならできますが、紙の単語帳では現実的ではありません。そこで単位を大きくします。
- 単語帳の見開き 1 ページ、または 1 セクション(20〜50 語)を 1 単位にする
- 今日そのセクションを学んだら、翌日・3 日後・1 週間後・2 週間後・1ヶ月後に「そのセクションの復習日」を置く
- 復習日には、そのセクションの単語を隠して意味を言えるか試す
単位を大きくしても効果は落ちません。2009年の Kornell の実験では、単語カードを小さな束に分けて集中的に回すより、大きな束のまま回して 1 語ごとの間隔を広くとった方が、後日の成績が高いという結果が出ています。「少数を集中して」は直後の手応えこそ良いものの、長期の定着では分散に劣ります。
復習は「隠して思い出す」。眺めない
英単語で最も時間を無駄にしやすいのが、単語と意味を並べて眺める復習です。眺めていると「知っている」感覚が生まれますが、それは見ているから分かるだけで、試験で問われたときに出てこない「見覚えがあるだけ」の状態です。
復習は必ず、意味を隠して自力で思い出す形にします。
- 英語 → 日本語: 単語を見て意味を言う(読解向け)
- 日本語 → 英語: 意味を見て単語を言う(英作文・スピーキング向け。こちらの方が難しく、効果も高い)
- 思い出せた語はそれで終わり。思い出せなかった語だけ、例文を読み直す
2006年の Roediger と Karpicke の実験では、読み直しを繰り返したグループより、思い出すテストをしたグループの方が 1 週間後の成績で大きく上回りました。英単語でも同じです。思い出せなかった瞬間が、その語にとって最も効く復習になります。
1 日の新規は「続けられる量」に固定する
復習を回し続けるために最も重要なのは、1 日に新しく覚える語数を一定にすることです。
今日 100 語覚えると、翌日・3 日後・1 週間後にそれぞれ 100 語分の復習が戻ってきます。やる気のある日にまとめて進めると、数日後に復習が 300 語分重なり、そこで回らなくなります。
目安は、新規 1 日 20〜30 語(セクション単位なら 1 日 1 セクション)です。この量なら、復習が 5 回分重なっても 1 日 100〜150 語を「隠して思い出す」だけで済み、15〜20 分で回ります。進みが遅く感じても、止まらない方が総量では速いです。
覚えにくい語への対処
どうしても覚えられない語は、復習の回数を増やすより、手がかりを増やす方が効きます。
- 例文ごと覚える。文脈があると思い出すきっかけが増える
- 語源や接頭辞・接尾辞に分解する(un-、-able、-tion など)。知っている部品と結びつける
- 音読する。綴りと音を結びつけると、どちらか一方からでも思い出せるようになる
これらは「覚えやすくする工夫」であって、復習の代わりではありません。手がかりを足した上で、復習日に思い出す練習を続けるのが基本です。
試験まで時間がない場合
TOEIC や英検の直前なら、全語を均等に回す時間はありません。優先順位をつけます。
- 頻出語(単語帳の前半、またはレベル別の基礎パート)から回す
- 一度でも思い出せた語は、直前期は復習間隔を広げてよい(1 週間放置しても大きくは落ちない)
- 一度も思い出せていない語に時間を集中する
試験までの残り期間が短いほど復習間隔は詰める、というのが研究の示す原則です(試験日から逆算する復習計画)。直前 1 週間は、思い出せなかった語だけを毎日見直す形にします。
まとめ
- 英単語は周回数ではなく復習日で管理する。翌日・3 日後・1 週間後・2 週間後・1ヶ月後が目安
- 単位は 1 語でなく見開き・セクションでよい。大きな束のまま間隔を広げる方が定着する(Kornell, 2009)
- 復習は隠して思い出す。眺める復習は「見覚え」しか作らない
- 1 日の新規語数を固定する(20〜30 語)。まとめて進めると数日後に復習が重なって止まる
- 覚えにくい語は回数より手がかり(例文・語源・音読)を足す